通信技術の海外動向
中村 武宏/永田 聡
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自動運転に必要な通信技術の世界的な動向を知るためには、各国の標準化団体が参画するプロジェクト:3GPP(Third Generation Partnership Project)の動向を知る必要がある。同プロジェクトには、日本の電波産業会(ARIB)や情報通信技術委員会(TTC)の他、アメリカのATISや欧州のETSI、韓国のTTA、中国のCCSA、インドのTSDSIといった団体が参画している。
近年は、既存のLTE技術や5G(第5世代移動通信システム)を、高度運転支援やコネクテッドカーに応用するなどの目的で、自動車業界からも注目を集めている。2016年から議論されている3GPPの標準仕様「Release14 LTE」では、V2X(Vehicle to X=Everything)と呼ばれる車とモノ、ヒトとのLTE通信技術について仕様化が行われている。
V2Xは、道路交通の最適化ために必須の技術であり、カーナビやVICS(Vehicle Information Communication System)、ETCのように既に日本国内で実用化されているものもある。
車と道路インフラとの通信は、路車間通信(V2I:Vehicle to Infrastructure)と呼ばれ、路側ユニットと呼ばれる道路近辺にある通信機を用いて、目視できない場所にある信号の表示を知る、走行中の道路の先の交通状況を自動車に知らせるといった活用法が考えられている。
車同士の通信は、車々間通信(V2V:Vehicle to Vehicle)と呼ばれ、死角にある車の存在を、車同士が認識し合うなどが考えられている。
車と歩行者の通信は、歩車間通信(V2P:Vehicle to Pedestrian)と呼ばれ、歩行者の持つ端末からの信号を車が認識したり、歩行者が車の状況を認識したりするなどが考えられている。
このような、端末(自動車、路側ユニット、信号機、スマートフォンなど)同士の直接通信のほか、携帯電話のように基地局と端末とが通信し合う環境についても、今後さらなる発展が見込まれる。またLTEのみならず、昨今議論されている5G(第5世代移動通信システム)によって、通信がより「低遅延・高信頼」になれば、コネクテッドカーや自動運転技術への更なる寄与も期待できるだろう。
この章では、3GPPの動向を注視しながら、自動運転に関わる通信技術が、今、世界でどう議論されているのかを紹介する。