クルマ移動生活の実態松本 周己

③クルマ移動生活者に必要な生活インフラ

2017.03.23

この10年、団塊世代が定年退職する時期と併せて、キャンピングカーでの旅行者が如実に増加したと実感している。さらに自動運転が実現することによってクルマ移動生活が一般化したならば、どういう事態が起こりうるだろうか。また実行するにあたって、どういった心構えをしておくべきであろうか。キャンピングカーでクルマ移動生活を続けてきた身から考える。

まず、キャンピングカー程度のサイズのクルマで移動生活をする場合、駐車場が広い店舗でなければ利用できない。郊外のコンビニや大型スーパーなどは敷地が広いが、都市部はそうはいかない。稀に出入り口にアーチが架かっている店舗があり、高さにも気をつけなければならない。

洗濯はコインランドリーを利用することになるが、コインランドリーは住宅街などに多く、駐車場もさほど広くはない。ショッピングモールにコインランドリーが併設されていればラッキーである。ショッピングモールにはペットのトリミングや美容室もあるので愛犬を連れていたわたしにとっては1ヶ所でいくつもの用事を済ませられるので、利便性が高い。

買い物をする際は定住していれば「○○は、あそこが安い」などどこで何を買うべきかがわかるが、土地勘もない場所で店舗を探しまわるのは得策ではない。うっかり狭い住宅街や商店街にはまり込んでしまわないとも限らず、大型車にとっては危険きわまりない。

もしクルマでLPガスを使用しているならば、充填所を探すのも困難である。キャンピングカーで使用しているガスボンベへの充填を断る営業所も増えており、近年のオートキャンパーの悩みでもある。ゆえにオール電化のキャンピングカーが主流になりつつあるのも事実だ。

クルマ移動生活者にとって、現在すでに大活用されているのは「道の駅」である。物産館やレストランはもちろん、入浴施設まで併設しているところもあり、たいへん便利だ。駐車場には街灯が点いているし、トイレも24時間利用できる。

現在でも道の駅で休憩しているトラック、車中泊旅と思われるクルマをよく見かけるし、人気の場所では週末ともなるとかなりの台数が停泊している。夏には道の駅にテントを張って寝泊まりする徒歩旅行者、バイカーもいるくらいだ。

しかし道の駅は車中泊を公認してはおらず、あくまでも「休憩・仮眠」を前提としている。多くの道の駅は黙認しているのだが、テントキャンプなど目に余る場合は退去させる場合もある。

全国どこにでもキャンプ場(オートキャンプ場)があるにも関わらず、「有料でもいいから道の駅に停泊したい」という意見が少なくない。おそらく利用者が常にいるため、安心感があるのだろう。キャンプ場は自然ゆたかな場所にあり、町から離れている。周辺に店舗なども見当たらないだろう。休暇期間中以外(平日)は誰もいないこともしばしばだ。それを楽しめる性格であればいいが、「怖い」と思うのが通常だろう。

「有料でもいいから道の駅に停泊したい」を実現可能にしたのが、「RVパーク」である。場所により異なるが、おおよそ1泊(1台)1,000円から、電源(有料)まで完備しているところもある。RVパークは道の駅だけでなく、ホテルや温泉施設などとも提携しており、2017年3月現在、全国に84ヶ所設けられている。施設によっては無料Wi-Fiやコインランドリーも利用できるのが魅力である。

クルマ移動生活で、もっとも苦労すると予想されるのは、ゴミの処置だ。ゴミ箱など、どこにでもあると思われるかも知れないが、近年ではゴミ箱を設置しない店舗が増えている。特に北海道では、ガソリンスタンドや道の駅、スーパーにもゴミ箱がない。コンビニは店舗内にゴミ箱を移しているし、自動販売機のそばにもゴミ箱がないほど徹底している。これは、各所においてゴミ放棄が頻発したためだ。買い物もせず、家庭ゴミを大きなゴミ袋のまま軒先に置き去りにするという、非常識なふるまいが横行し大問題となった。

クルマ移動生活者が、その土地に何の恩恵ももたらさないのであれば歓迎されないのは当然ではないだろうか。ゴミを捨てさせてもらうならば、その店舗で買い物をするくらいの良識があってほしい。

うれしい取り組みもある。旅行者用ゴミ袋を販売し、道の駅やコンビニで引き取ってくれるサービスが登場したことだ。燃えるゴミ/燃えないゴミ用があり、カセットガスボンベも引き取ってくれる(自治体によって異なる)。排除するばかりではなく、歩み寄ってくれる姿勢には感謝しかない。全国に広まってほしいと願っている。

ある道の駅ではキャンピングカーが駐車場のど真ん中で排水したり、カセットトイレの中身をトイレに流すのを「禁止」と張り紙されていた。1回100円でも汚水捨て場(ダンプステーション)があれば、クルマ移動生活者も快く利用すると思うし、それ目当てに訪れるようになるかも知れない。

北海道には無料のキャンプ場が多々あったが、年々減って(有料化して)いる。数ヶ月単位で住み着いてしまう旅行者(?)がいたためだ。足湯で入浴するツワモノもいるという。

何かにつけ金銭を要求されるのを嫌がる風潮もあるが、その地域のインフラを利用させてもらうのだから搾取とは違う。持ちつ持たれつ、いい関係を築きたいものだ。

③クルマ移動生活者に必要な生活インフラ