通信技術の海外動向中村 武宏/永田 聡

①通信の標準化動向:5Gの3つのユースケース

2016.12.12

3GPPで議論が盛り上がっているものの一つに、5G(第5世代移動通信システム)をどのようなユースケースで導入するかということがある。5Gのユースケースには主に3つの選択肢がある。1つは高速大容量を重視するもの、2つ目に高信頼・低遅延を重視するもの、そして3つ目が多量接続を重視するものだ。

高速大容量を重視する仕様は、eMBB(enhanced Mobile Broad Band)と呼ばれるものであり、私たちとしては、2020年までにこの仕様の5Gホットスポットを作って、ユーザーの端末から高速大容量の通信ができるようにしたいと考えている。

高信頼・低遅延の5Gは、URLLC(Ultra Reliability and Low Latency Communication)と呼ばれ、工場や遠隔手術といった、信頼性と低遅延が求められる分野に応用される技術として期待されている。自動運転やコネクテッドカーといった分野でもっとも期待されているのはこの仕様だろう。

多量接続を重視する仕様は、mMTC(massive Machine Type Communication)と呼ばれる。ガスメーターのような端末を、大量に基地局につなぐようなときに活用される。これについては、直近のタイミングについてはLTEの技術である程度担保できることもあり、仕様化を行う時期は後でも良いというコンセンサスが世界的に取れている。

2つ目の高信頼・低遅延の5Gが、自動運転やコネクテッドカーという分野では注目を集めている。車に対して無線通信技術を活用するユースケースについては、前述のURLLCのみならず、eMBBやmMTCにおいても活用可能な技術が考えられる。3GPPでも今後、自動車業界を巻き込みながら議論が進み、標準仕様が決まっていくだろう。

車業界とICT業界の間にある考え方の違いを乗り越えながら、しっかり協力してコネクテッドカーによる良い社会を実現していきたい。私たちも、「低遅延で高信頼だから、無線通信で車をコントロールしてください」と軽々しく言うことはできない。車載センサーやカメラ、AIなどで自動運転を実現するにしても、無線通信を補完的に活用していただきたいと考えている。

現在議論されているRelease14 LTEでは、2016年9月にLTEを使った車々間通信についての標準仕様が合意された。5Gについては、まだ要求条件や適用シナリオを話し合っている段階だ。

①通信の標準化動向:5Gの3つのユースケース