技術革新がもたらす障害者の再定義
佐々木 一成
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右足に義足、左足に装具を身につける足が不自由なひと。右手の中指もない。小さい頃に見た『ターミネーター』で、シュワちゃんの肌の下からロボットの体が見えたとき、自分の義足もターミネーターばりのクオリティならカッコいいのに…と思って今に至る。
早く走れるようになりたいから義足にしてくるね!最近老眼がひどくて義眼にしちゃったの。暗記とかめんどくさいじゃん、メモリーカードを脳につないじゃったよ。そんな社会へと進歩すれば、バリアフリーとかインクルージョンとか人権とか、面倒くさい概念を引っ張ってこなくても、障害者にとって暮らしやすい社会が生まれるのにと感じている。
『攻殻機動隊』の草薙素子は全身義体化していて、今の社会に置き換えて考えると障害者の可能性も大いにあるのだが、彼女を障害者と呼べるのかどうか。技術革新によって、障害者を再定義する必要性が生まれることは間違いなく、近い将来の社会課題となりえる。
小学生の頃、15メートルのダッシュなら友だちにも負けないのに、運動会のかけっこになると最下位ばかりで、好きな女の子の前でヒーローにさせてくれなかったことに対して、足の不自由さを恨んでいた。かけっこで一等賞獲ってみたい!これがSF的な世界観への憧れとの出会い。義足で相手に飛び蹴りをかます「ギブスキック」が当時の必殺技だったが、これはプロレス的世界観への憧れ。
高校生、大学生となり、遊ぶことを覚えてくると、合コンに行っても相手の女性陣に障害者がいない、海で騒いでいても障害者がいないことに気づく。あれ?自分しかいない?そんな障害者不在の社会を感じたことを原体験に、どうすれば障害者が社会にもっと気軽に出ていくことができるのか、どうすればストレスなく社会が障害者を受け入れることができるのかを考え始め、現在の活動に繋がっている。
技術の進歩、発展はエンジニアの皆さまにお任せして、パラダイムシフトを目指す社会への意見提案、発信を生業とする。身構えず、気軽に、フツーに、障害者が社会に溶け込んでいる状態を作ることができればと思い、今日も原稿を書いている。ブラインドタッチが早くなり、肩がこらない義手をお願いします。