ドイツの都市生活にみる「豊かな移動」

大谷 悠

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大谷 悠
大谷 悠 (おおたに・ゆう)
1984年生まれ、東京都出身。千葉大学で建築と都市計画を学んだ後、2010年の卒業と同時にドイツに渡り、旧産炭地域ラオジッツにて住民“主体”型芸術祭「Paradies 2」に参加。ここでまちづくりにおける住民の主体性の重要さとその実践を目の当たりにしたことをきっかけに、2011年5月ライプツィヒの空き家にて「日本の家」を立ち上げ、地域の移民・難民、教育、芸術・文化などのテーマに地元の人々が自ら関わり、活動するためのプラットフォームとネットワークづくりを行ってきた。近年では、行政や大学などに関係なく、グローバルにまちづくりの現場同士がつながり、協働する活動に関心を持っている。2016年より東京大学新領域創成科学科博士後期課程に所属。ボトムアップ型まちづくりと都市コモンズをテーマに研究中。

筆者はドイツ中部のまち、人口55万人ほどのライプツィヒに住み、都市に住む人々が都市生活のために自ら生み出す「場所」について研究している。2011年からは中心市街地にほど近いところにある衰退商店街の空き家で、「ライプツィヒ日本の家」という交流拠点を運営し、ごはんの会、ワークショップ、展覧会などを行う.近所の人々が毎週100人くらい集まる場所だ。

まちで生活するということに「移動する」はつきものだ。特に都市が大きくなればなるほど「移動」に費やす時間は増える。つまり「移動する」ということが豊かであれば、まちに暮らすということもまた豊かになる。本連載はそんな視点から、ドイツに暮らしていく中で出会った「移動すること」の豊かさについて考えるきっかけになるような、先進的(あるいはある意味古典的な)事例を紹介していこうと思う。

本稿では、まず車と人々の関係について見ていく。現地の人々の話を聞いていると、一人一台、あるいは一家に一台車を所有する必要が「そもそも無い」と考えている人がとても多い。ドイツでカーシェアリングがとてもポピュラーになっている背景には「普段使わず、置き場所にこまるくらい大きくて、持っているだけでカネがかかる代物」としての自動車を個人所有することにメリットが無いという合理的な判断だ。そんなドイツ社会で、実際にどんな形のカーシェアリングがあるのか、人々はそれをどのような動機でどのように利用しているのか、具体的にレポートする。

次にまちのかたちに目を向けてみたい。ライプツィヒに住んで驚いたのは、公共交通網の細やかさだ。人口55万人ほどの都市だが、だいたい10分おきにトラムが走り、渋滞を気にせずまちを縦横無尽に移動できる。これ実は、旧共産圏の名残なのだ。西側の都市では70年代ごろからモータリゼーションが起こり「車のためのまちづくり」によってトラムが廃止され、車道が広げられたり幹線道路が新たに作られたりことで、都市が大きく変わった。一方で旧共産圏の東ドイツの都市では、車が西側ほど普及しなかったために人々の移動手段としてトラムが残った。現在、環境的にも景観的にも高評価を得ているのは、西ドイツよりむしろ東ドイツのまちである。そんな発展が「遅れた」地域だからこそ残ったまちの豊かさについてレポートする。

そして移動することの未来について、ライプツィヒから見えてくることもレポートしていきたい。ライプツィヒで今もっとも注目されている移動手段は、なんといっても自転車だ。自転車同好会が組織され、自転車の普及だけでなく、「自転車が移動の主役になるまち」の実現に向け、ロビーイングを行っている。また自転車を自分たちで直したり改造したりこともまちのいたるところで盛んに行われている。自転車から見えてくる、「移動すること」の古くて新しいかたちをレポートしたい。

以上のような、ドイツで生活・活動していく中で筆者自身が体験している「移動すること」にまつわる話題を中心にレポートしていきたいと思う。お付き合いいただければ幸いである。

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大谷 悠 (おおたに・ゆう)
1984年生まれ、東京都出身。千葉大学で建築と都市計画を学んだ後、2010年の卒業と同時にドイツに渡り、旧産炭地域ラオジッツにて住民“主体”型芸術祭「Paradies 2」に参加。ここでまちづくりにおける住民の主体性の重要さとその実践を目の当たりにしたことをきっかけに、2011年5月ライプツィヒの空き家にて「日本の家」を立ち上げ、地域の移民・難民、教育、芸術・文化などのテーマに地元の人々が自ら関わり、活動するためのプラットフォームとネットワークづくりを行ってきた。近年では、行政や大学などに関係なく、グローバルにまちづくりの現場同士がつながり、協働する活動に関心を持っている。2016年より東京大学新領域創成科学科博士後期課程に所属。ボトムアップ型まちづくりと都市コモンズをテーマに研究中。