自動化をリードする空の視点

村山 哲也

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村山 哲也
村山 哲也 (むらやま・てつや)
1983年生まれ。2006年東京理科大学理学部卒業、2007年国土交通省入省、航空保安大学校の研修を経て東京航空局成田空港事務所に配属。航空管制官在職中、独学でホームページ制作技術を学び、2015年国土交通省退職。現在は、海外でインターネット事業会社を運営する傍ら、航空管制と航空機オペレーションのいまを発信中。

航空管制官というのは国土交通省所属の国家公務員で、主な業務は航空機間または航空機と障害物間の衝突を避けるため、無線を通してパイロットに指示を与えることである。航空業界は、自動運転が現実味を帯びる以前から、増大する航空需要に耐えかねて自動化を推進してきた。とりわけ人命に直結する航空機の運航は、過去の度重なる事故やヒヤリ・ハットを教訓としてヒューマンエラーの研究と実践を繰り返した。現在の自動運転が目指す方向性を見ていると、空港の管制塔で痛い思いを経験してきた私が口を挟みたくなる点が目についてしまう。エラーとはいつも想定外の出来事である。モバイルのアップデートプログラムとは違い、不具合が許されない自動運転のセーフティーネットがドライバー自身である以上、盲点がないと実感できる議論が必要である。

AIが人間よりも上手に運転が出来る例で、狭いエリアに複数の車が縦横無尽に動きながら避ける様を流す映像があるが、いつまでも集団で協調行動するしぐさは見られない。人が安全を感じる単純な動きを想像してしまうのは職業病に近いが、もし私の指示で車を動かせるのであれば、円形に追走する仮想の軌跡をイメージしたラウンドアバウトの交差点を作る。レベル3でドライバーに交代を要請するケースをゼロに近づけるには、リスクをあらかじめ低減しておいたうえで不具合や緊急時の対応をAIがどこまでカバーできるか、それも自動運転でない人間の手によるエラーまで読み切れるかどうかがレベル4達成の鍵を握り、遅れるようであれば自動運転専用道路を作り法で縛るしかなくなる。

空港

自動運転の進歩と同様に、日本の航空業界では、東京オリンピックに向けた空港需要増加予測に基づいた首都圏空域再編計画に欠かせないシステムとして、旅客機が離陸後に目的の巡航高度へ達するまで水平飛行をしない継続上昇方式(CCO)を2019年度に導入する計画で、管制官及びパイロット双方の通信作業量減少、空域の効率的使用、さらにはCO2排出削減や空港周辺の騒音軽減に繋がると期待される。難題に思えるが、航空路及び空域再編、新飛行方式の導入、滑走路の新設、航空管制で使用するレーダー等の管制機器や飛行情報端末の導入への適応は、航空管制官にとって手慣れたものである。

自動化では地上よりも上を行く空からの提言を、管制塔から1対他で航空機の交通流形成に務めた独自の視点で自由に代弁することは、自動運転車が走る未来に役立つのではないかと信じてやまない。

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1983年生まれ。2006年東京理科大学理学部卒業、2007年国土交通省入省、航空保安大学校の研修を経て東京航空局成田空港事務所に配属。航空管制官在職中、独学でホームページ制作技術を学び、2015年国土交通省退職。現在は、海外でインターネット事業会社を運営する傍ら、航空管制と航空機オペレーションのいまを発信中。

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