総務省の視点:自動運転とネットワーク

鈴木 茂樹

総務省にとって自動運転システムの導入は、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)をつくるために、5省庁連携で進めていたプロジェクトの一環でした。

通信部門を総務省が、自動車の製造を経済産業省が、道路や橋の整備を旧建設省が、新しい自動車のルールづくりを旧運輸省が、交通規制を警察庁が担当する。この5省庁連携体制が、ITSのプロジェクトでは早くからできていました。

世界的にもITS世界会議は1994年から毎年開かれていて、2013年の日本での開催以降は、国内でも自動運転への機運が高まっています。

これまで総務省は、レーダーや路車間、車車間通信のための制度づくりに取り組んできました。レーダーは車が周囲の障害物を検知するために欠かせないもので、2010年には24/26GHz帯UWBレーダーを制度化し、2012年には、近距離から中距離までの車両の全周囲を高分解能で検知できる79GHz帯高分解能レーダーを制度化しました。この高周波のレーダーは、大人か子どもか、人か動物か、そういった対象物の形態がわかるくらいまで性能が上がっています。

【参考】ITSにおいて利用している周波数

自動走行の実現に向けた総務省の取組(平成28年12月15日・総務省)より

他方、走っている車と道路で情報のやりとりをする(路車間通信)、あるいは車と車で情報のやりとりをする(車車間通信)ためには、760MHz帯を使っています。車や信号機が電波を出すことで、見通しの悪い交差点でも右側から車が来ていることや、目の前の信号があと5秒で赤に変わることなどが分かります。

この「ITS(高度道路交通システム)専用周波数帯」を利用した車車間通信・路車間通信に対応した車は、トヨタから既に発売されています。実際に車が信号機や他の車と情報のやりとりをして、前の車がブレーキを踏んだ瞬間に後ろの車もブレーキをかけるようなことは行われています。

Googleはこのような通信による制御よりも、画像認識に重きを置いていて、人間が目で見たのと同じような形で周囲の状況を検知しようとしていました。しかし最近は、彼らもずいぶんLIDAR(レーザーレーダー)を使っていると聞いています。

この章では、新世代移動通信システム推進室長の中村裕治とともに、セキュリティ対策や自動運転関連産業の未来について述べていきます。