地方への移住と自動運転

森 一貴

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森 一貴
森 一貴 (もり・かずき)
1991年山形県生まれ。東京大学教養学部卒業。コンサルティング企業にて勤務後、福井県鯖江市の「ゆるい移住」をきっかけに移住。鯖江市では工房・職人体験イベント「RENEW」など、まちづくりに関わる企画・実行支援を手がける。また、対話・探求・実践を通じて、新しくたのしい社会を創る子どもを育てる「ハル・キャンパス」を手がけ、教育とまちづくりを横断した実践を続ける。(web: http://dutoit6.com/

いまの日本において、自動運転が最も影響を与える場所はどこだろう? 改めて問うまでもなく、それは「地方」だ。地方は、そもそも自動車での移動を前提に構築されている。であれば、自動運転は地方における移動を、根底から変革していくはずだ。

さて、自動運転の登場によって、移動は簡便になる。当然、これまで交通弱者だった学生や高齢者の生活スケールは大きく拡大する。また移動時間の自由度が高まり、これまで自動車を常用していた人々も、移動時間を作業や睡眠に充てることができるなど、いくつかの変化が容易に想像できる。しかし、こうした変化はこれまでの生活の延長線上にあり、自動運転がもたらす変化のほんの一側面にすぎない。

改めて、地方でこれまで議論されてきた「まちづくり」の文脈を、自動運転という視点で眺めてみよう。例えば「観光」。これまでは地方に来ても、自動車がなくては観光など成立しなかった。では、そこに自動運転があったら?あるいは「移住」はどうか。これまで移住を阻害してきた「仕事の不足」や「公共交通への懸念」を、自動運転はどう変えうるか。「コミュニティ」ではどうか。これまでは、移動時間や交通弱者という要素を鑑みるがゆえに、コミュニティの成立は「場所」という変数に大きく依存してきたはず。では、その構成員が、全員自由に、どこへでも移動できるようになったらどうなる?

繰り返しになるが、地方においてはその移動のほとんど全てを「自動車」が担ってきたのである。そして地方における移動はこれまで、居住地や仕事、コミュニティにいたるまで、地方のあらゆる概念を規定する上で、重要な変数として機能してきた。すなわち自動運転の登場は、その地方の総体に関する再定義を迫っているのである。

本章では、実際に都会から地方へ移住した移住当事者として、また実際に地方で実践を試みる当事者としての私の視点から、「地方」や「まちづくり」に自動運転が与える影響について論じてみたい。

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森 一貴 (もり・かずき)
1991年山形県生まれ。東京大学教養学部卒業。コンサルティング企業にて勤務後、福井県鯖江市の「ゆるい移住」をきっかけに移住。鯖江市では工房・職人体験イベント「RENEW」など、まちづくりに関わる企画・実行支援を手がける。また、対話・探求・実践を通じて、新しくたのしい社会を創る子どもを育てる「ハル・キャンパス」を手がけ、教育とまちづくりを横断した実践を続ける。(web: http://dutoit6.com/