「不便益(不便の益:Benefit of Inconvenience)」とは、手間がかかることで得られる益のことだ。これは、手間がかかること(=不便なコトやモノ)によって得られるタスク達成や、能力向上といった客観的な益だけでなく、そのことによって行為主体たるユーザが感じる主観的な益をも含む。手間をかけて客観的な益が得られることによって、自己肯定感が醸成されたり(「できた!」「私はやればできる!」)、動機づけを内在化することができる(「もっと使いたい!」)。このような手間をかけることによる嬉しさや楽しさが「不便益」だ。

便利なモノやコトを不便なモノやコトに再設計することで、現状の益とは異なる益を生み出すことができる。また、ユーザが手間をかけられないために害になっているサービス(便利害)を不便益に変えることも可能だ。

第1章では、不便益の定義と、その価値を考える。

不便益とは

①不便益研究とは何か