遊動と移動の美学へ原 研哉

①多様性、清潔さ、正確さ

2017.05.09

クルマは一部のドライブ好きの領域を残しつつ、主軸はモバイルへと変わっていくでしょう。移動システムに制御された自動車の運行が、人の運転よりも圧倒的に安全になるとするなら、手動運転はもはや冒険的な行為に見えてくるかもしれません。過ちを犯しやすい人間が、白線を超えてはいけないというルールとお互いの信用だけで、時速100キロですれ違っていたような状況は「信じられない」と野蛮に思われる時代が来るかもしれません。高速・精密に運行されている自動運転レーンに、手動運転車は簡単には入れないでしょうし、事故の原因となるので、高速道路は手動運転のレーンと明快に区別されるようになるかもしれません。

車 イラスト

そういう状況のクルマに求められるのは、利用条件に最適なサイズとかたちの多様性であり、清潔さ・快適さであり、また正確さであるように思われます。クルマが公共のものになるならステイタスの表出は必要ないので、形は用途に向かって合理化されていくでしょう。また、人が乗っていないということは、直接的にクルマを維持する管理者が不在ということになりますから、快適さの必要条件である「清潔さ」「健全さ」をいかに自動運転車に保証していくかは、とても重要なポイントになると思われます。

おそらくは、公共物のシェアリングに関するマナーは、より高度に確立されていくはずですし、今日のシェアリング・エコノミーが、利用者と事業者の相互評価で成立している点から推察して、利用者の自動運転車の使い方やマナーも、なんらかの方法で評価・管理されていくことになるでしょう。また、事業者は、車両の整備を、テクニカルな面でも、清潔さの面でも、システムとして管理できるという点が重要になると思われます。

①多様性、清潔さ、正確さ