不便益研究からみた理想の運転支援システム平岡 敏洋

⑤人間機械系の研究者として感じる自動運転の問題点

2017.05.19

レベル3以上の自動運転はとうぶん実現しない。事故の責任についての法的・哲学的問題や、センサーの検出精度を高めるためにかかるコストなど、解決すべき問題が山積しているためだ。可能性があるとすれば、高速道路に自動走行車専用レーンを作る、過疎地域のパーソナルモビリティとして最高速度を30km/hに限定したものを認めるなどだろう。

自動運転にまつわる問題点のなかでも、人間機械系(HMS: Human-Machine Systems)の研究者として看過できないのが、
(1)自動運転車が、他の運転者・歩行者・自転車等とどうコミュニケーションを取るかという問題と、
(2)レベル3の自動運転における手動モード⇔自動モードの切替え
についてだ。

もしある自動運転車(レベル3)が、高速道路でしか自動走行できないとする。その車が出口(インターチェンジ)に近づいたとき、ドライバーが寝ていた場合はどうなるのだろう。ある自動車メーカーの技術者によれば、ドライバーをモニタリングし、このまま手動運転に切り替えたら危ないとシステムが判断した場合、出口手前で安全に路肩に自動停車することで対応するとしている。これでは、インターチェンジ手前で自動運転車がたくさん停車する事態が発生することにならないだろうか。

人間にとって、何もしないのに監視しなければならないタスクは苦行に過ぎない。そういった状況下では、人間はそのようなタスクをしなくなるものだ。

⑤人間機械系の研究者として感じる自動運転の問題点